セレクトセール2007


●今年で第10回を迎えたセレクトセールが7月9〜11日の3日間に渡り苫小牧市にあるノーザンホースパークで行われました。
日本では馴染みが薄いが、国際的には当たり前の1yo馬のセリが初日に、後の2日間は当歳馬のセリが行われました。
3日間で467頭が上場され348頭が取り引きされ、落札率は74.5%(昨年度は70.4%)。取引総額は121億5574万5000円(税込み)にのぼった。
この額は昨年よりも1億8648万円少ない。が、これは参院選で忙しい関口氏が来なかった事と大きく関係がある(笑)。
売却最高額が3億円で納まった事が大きい。お祭り好きな関口氏が来て居れば5億は超えていたでしょうからね。
全売却額の平均価格は3490万円。1yo馬の売却率72.0%。その平均価格3193万円。これは、1998年に行われた最初の1yo馬のセリ時の売却率38.3%、平均価格1788万円を大きく上まわっている。
やっと日本のセリも世界標準に近づいてきた。日本人は青田買いが大好きで、ブランドに弱い。
生まれて数ヶ月しか経っていない仔馬に数億円をつぎ込んで、2年後に走らなくても別に何とも思わないらしい。
取りあえず、抑えておかないと、他の誰かに買われて、それが走る馬だったら悔しい。
さっさと売ってしまわないと、お金が直ぐにはいらないと翌年の産駒に影響する生産者が多いらしい。
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これらの言い分にも一理はある。が、購買者(馬主)はもっと馬について勉強すべきであり、販売者は自分達の商品にもっと責任を持つべきである。
馬の素質がある程度判る1yo馬のセリが国際的に盛んなのは、リスクを避ける意味が大きいのである。
特に社台のような大きな生産者は、この様なことは百も承知のはずなのだから、『購買者が当歳馬を求めているから』という理由だけでセリを行うのはやめて欲しい。
と同時に、がむしゃらに当歳馬を漁るような、恥ずかしい行為を購買者達も慎むべきである。また、国際的に通用しないような高額な価格を付けることも自重すべきである。
サラブレッド産業は国際産業であるわけなので、日本独自価格で取り引きされている限りは、外国のバイヤー達は購買しない。高額すぎるからである。
これは、言い方が間違っているかも知れない。未だ、日本は箱庭競馬国家であり、海外在住の馬主は認められていない。パートI国でありながら、おかしな話である。
が、先日ダーレーの日本法人がJRAの馬主として認められたように、今後はもっと広範囲において馬主権利が認められていくのは必至だと思う。
ならば、外国の馬主達に日本産馬を購入して貰い、JRA競馬で使って貰うという流れも近い将来やって来るだろう。
その時の為にも、もっと安価に沢山の馬を買ってもらい、今の内に海外の競馬で結果を出して貰うことも非常に大切なことである。
日本産馬は良く走る、だから少々高くても買う!・・・こう思って貰うことを目指すことが生産者としての義務であろう。

その為にも、同時期に行われるキーンランドのジュライセールと日にちをずらせて開催できればベストである。

・・・・・・・・・前置き終わり(笑)。

さ〜て、2007年に大盤振る舞いをした人達・・・それはアドマイヤの冠でお馴染みの近藤利一氏。
6月に行われたG1宝塚記念で愛馬アドマイヤムーンが優勝。その兄弟達に大金をつぎ込んだ。
ライバルの関口氏が参院選で忙しいのを鬼の居ぬ間に洗濯宜しく、マイケーティーズの2006(牡・父フレンチデピュティ)を2億5千万円で、同牝馬2007年産駒(牡・父クロフネ)を3億円でお買い上げ。
2年連続でドゥバイWCを勝ちたい!とか思わず言ったらしいが、根拠が全然無いよ(笑)。
兄のアドマイヤムーンは良い馬だと思うし、将来の種牡馬としての素質もかなり高い。同馬の父はエンドスウィープ(2002年死亡)。
このエンドスウィープはかなり凄い種牡馬である。サンデーサイレンス最盛期に導入されて、言うなればサンデーサイレンスに種付けできなかった・あぶれた牝馬やサンデーサイレンスを種付けできない牝馬等と配合され、当初はさして期待もされていなかったのであるが、蓋を開けてみるとG1宝塚記念まで勝ってしまったスイープトウショウや快速牝馬ラインクラフト(死亡は非常に残念)、快速砂小僧サウスヴィグラス、アルーリングアクト等々、2yoから活躍し芝/ダート両方で活躍馬を出している。そして、遂にアドマイヤムーンという大物を出した。
もう1年、長生きしていたら日本の競馬を変えてしまったかもしれないほどの種牡馬だった。
で、マイケーティーズの父はサンデーサイレンス。このスーパーな種牡馬は母父となっても産駒に多大な影響を及ぼす。
アドマイヤムーンの様な大物が出たのも頷ける。が、近藤氏がお買いになったフレンチデピュティ/クロフネ産駒は総じて早熟であり、3yoも後半になるとダートの短距離にしか勝てない馬が多い。
しかもクロフネはフレンチデピュティの産駒である。JCダートを2年連続で勝ちたい!と言うならば微笑ましいが、ドゥバイWCをとなると・・・なんともはやである。
そんな折り、ゴドルフィンからのトレード話が舞い込んできた。噂では30億の金でアドマイヤムーンを譲って欲しいとか。
近藤氏も話しに乗り気らしい。条件としては秋の天皇賞に出走できれば・・・みたいな。
12月に香港に行くとか言ってた話は反故か?近藤氏が関口氏の様な金の亡者なら何も言わない。高く買ってくれるところに売るのは当然だし、賞賛を浴びる事だ。ノープロブレムである。
が、貴重なエンドスウィープの代表産駒が日本で種牡馬生活を送れないのは痛い。まあ、ダーレーで種牡馬として大成功してくれればそれはそれで結構な話でもあるな。
どういう結果になるのか、見ていくのが楽しみだ。
結局今回のセリで近藤氏は22頭の産駒を13億円でお買い上げになった。

次に大判振る舞いをしたのはディープインパクトのオーナーでお馴染みの金子真人氏。
かれは、強運の持ち主であり、毎年のように持ち馬が大活躍する。トゥザヴィクトリーに始まり、クロフネ、カネヒキリ、キングカメハメハ、ディープと超大物を所有する機会に恵まれすぎ。
引退後の種牡馬としても超人気である。多額のシンジケートで所有し、一体幾ら儲けてるんだと余計な詮索をしたくなる。
人間、金を持ちすぎるとろくな事はない。
素朴で正直な一競走馬オーナーであった金子氏も今では立派な関口氏2世になってしまった。
話は戻るが、昨年のG1凱旋門賞、私はディープは勝てない、勝つのは3yo馬のレイルリンクだろうと見ていた。
3yo馬に有利な斤量、臨戦態勢の良さ。対してトライアルレースを使わずにぶっつけで挑戦したディープ。
あのエルコンドルパサーでも勝てなかった凱旋門賞。準備不足で勝てる分けない。重い馬場、初コース、これらは本場馬で追い切りを掛けた位では解決できないことだ。
せめてトライアルを使っていたら、と思う。負けるべくして負けたレースだった。なのに・・・・
凱旋門賞は3yo馬のためのレースだ、来年は挑戦させない、古馬では来ない。等と負け惜しみ。
凱旋門賞が3yo馬に有利なことは誰でも知っているし、だからこそ古馬で勝つことの価値は大きいのである。100%の準備をせずに出走しておきながら、負けたのがレースのせいだって?あんたアホか!5年前の金子氏なら先ず言わなかったろうこの言葉・・・・金は人間をダメにする見本だな。

さて、その金子氏が今年競り落としたのは、エアグルーヴの2006(牡・父ダンスインザダーク)。2億4500万円也。まあ、これはお約束だわね。
誰かが高額で買わないとイケナイのである。
この産駒は昨年の当歳馬セールには意識して上場しなかった馬。今年の1yo馬のセリに客を寄せるために取っていたものだった。
関口氏が来て居ればもっと高値ついたであろうが・・・社台としては目論見が外れた。そう、参院選があるから(笑)。
同馬の全兄弟であるザサンデーフサイチ(4億9000万円)がデビュー戦後に骨折した様な事がなきゃ良いのだが・・・。
ただ、この人の良いところは、直感が鋭いというかセンスがあるところ。
今回のセリにおいても、ドゥバイデスディネーションの1yoの牝馬(5100万円)、ファルブラヴの当歳牡馬(9800万円)、ゴールデンミサイルの当歳牡馬(3600万円)、アルカセットの当歳牡馬(3100万円)で一発大物を狙う一方、サクラバクシンオーやフジキセキやブライアンズタイムやアグネスタキオン等の産駒を絶妙なバランスで購入している。後者の馬達は大物が出る可能性は低いが堅実に稼いでくれる可能性は高いからである。


この様に、表向きは大成功に終わったセレクトセールであるが、課題は山積み。
今年、海外に買われていったのは、わずか2頭。1頭は香港ジョッキークラブ、もう1頭はJ.Ryan氏(何処の代理人か判らず)が両者共に1yo馬を購入している。
日本最大のセリで、海外に買われていったのがたったの2頭・・・。前置きにも書いた通り、日本の競馬産業は国内だけで回っている。
かと言って、中小の牧場の惨状は変わっていない。ハッキリ言えば社台グループの一人勝ち状態。上場馬の殆どが社台ブランドの馬なのだからこの結果は当然ではある。優秀な競走馬を多く輩出し、それらを種牡馬として繋養し、その産駒を上場する。中小の牧場には真似ができない。対抗しようとすると自らを破滅させる結果となる。(ラムタラが例)
ならば、社台とは違った所で勝負すればいいのである。安い馬=走らない馬では決してないはず。欧州は別にしても、アジア各国では競馬は盛んであり、安い馬を求めている。
例えばシンガポール、彼らに売り込んで、最初はお試しの様な値段で買ってもらって実績が作れれば、日本のセリにどんどん来てくれるかも知れない。
香港だってしかりだ。彼らは安い馬を求めている。多少のリスクは背負い込んで勝負すべき。(高額な種牡馬を導入して等という自殺的行為は辞めるべし)
ただし、金銭的に余裕のある社台が同じ事を始めたら勝ち目はない。この辺りは社台の良識次第ではある。社台はもっとアメリカやヨーロッパのバイヤーに馬を買わせる努力をするべきである。
トップクラスの産駒をキーンランドやタタサルスの競り市に出すべきである。大企業としての責務だと思う。
日本産馬を欧米の競馬で走らせる事がこれら中小の生産者達を助けることにもなるからである。

さて、来年はディープインパクトの初年度産駒が上場される。おそらく、記録的な売却額が記録されるだろう。
それらの何頭かが日本以外の何処かで走ることができたら嬉しいことである。


2007/7/27 

セレクトセール2007 1yo馬 高額落札種牡馬 10
種牡馬名 上場頭数 落札頭数 最高価格 平均価格
フレンチデピュティ 7 5 2億5000万円 7974万円
クロフネ 12 9 1億4000万円 3066万6667円
ダンスインザダーク 4 2 2億4500万円 1億3500万円
ジャングルポケット 5 4 1億7000万円 6500万円
アグネスタキオン 11 10 5200万円 2740万円
キングカメカメハ 10 6 8400万円 3933万3333円
シンボリクリスエス 8 5 6100万円 3100万円
タニノギムレット 6 6 4500万円 2250万円
サクラバクシンオー 7 7 4000万円 1778万5714円
フジキセキ 10 5 3900万円 2390万円
※初年度産駒の大活躍でタニノギムレットの産駒は完売。シンボリクリスエスは今年産駒がデビュー。


セレクトセール2007 当歳馬 高額落札種牡馬 10
種牡馬名 上場頭数 落札頭数 最高価格 平均価格
クロフネ 26 18 3億円 5169万4444円
アグネスタキオン 19 16 1億5500万円 5609万3750円
キングカメハメハ 26 17 1億5500万円 4641万1765円
ネオユニヴァース 15 12 9200万円 3933万3333円
シンボリクリスエス 19 15 7200万円 3083万3333円
スペシャルウィーク 18 13 7800万円 3084万6154円
フジキセキ 16 11 9200万円 3513万6364円
ファルブラヴ 12 12 9800万円 3204万1667円
デュランダル 15 13 7000万円 2811万5385円
ゼンノロブロイ 16 14 1億円 2453万5714円
※デュランダル、ゼンノロブロイは初年度産駒。ファルブラヴ、シンボリクリスエスは今年産駒デビュー。